高齢者は、認知機能や聴覚能力が衰えやすく、他人とのコミュニケーションが難しくなって不安が高まります。そこで、介護職員にとって、高齢者のメンタルケアが重要な業務になると言えるでしょう。最も大切なポイントは、高齢者を孤立化させないことです。常に声かけを怠らず、忙しい時も高齢者の様子に気を配ります。声かけは、高齢者の正面で低い位置から大きな声でゆっくりと話しかけるといった工夫が欠かせません。また、身体機能の低下した高齢者は、自己実現の機会が乏しく、自分の存在価値を感じられなくなりがちです。現役時代の手柄話を繰り返すのは、自分の存在価値を再確認したいからなのです。

こうした話は、介護職員は時々耳を傾けてあげなければなりません。誰も聞いてくれないと、高齢者の不満や不安が高まってしまいます。相談相手になって一方的に話を聴いてあげるだけでも、高齢者のメンタルケアになるのです。多くの場合、話好きの高齢者は、解決策や感想を介護職員に求めないでしょう。自分が受け入れられているという感覚を高齢者が持てれば、積極性が増して生活にもハリが出てきます。要介護度の進行を抑える効果も期待できます。メンタルケアを心がける介護職員に対して信頼度が増して、コミュニケーションがスムーズになるでしょう。

介護職員は、人材不足のため、どうしても介助や雑務に追われて高齢者のメンタルケアまで手が回らないという事情があります。しかし、日頃からメンタルケアを意識して実行していないと、高齢者との信頼関係を築けず、結局仕事がやりにくくなるので、メンタルケアを最優先する努力が不可欠なのです。